女と暮らす男の視線から。家を買って女と住みつく。色気のある女で、私を好いてくれるという。古ぼけた家には戸が壁の至る所にあって全体を把握できていないが、掃除用具入れの奥に扉があるのを見つけて押し開くと寝室とダイニングが一緒になった部屋に繋がっていた。小鍋がコンロにかかっていた。そこから部屋に入っていくと盛り上がった布団に女が寝ていて、その寝姿があんまりにも健やかなものだからもういいか、と思う。書斎に移動し、三重に鍵のかかった箪笥を開いて、また三重に折り重なった入れ物を丁寧に割り開いて小刀を取り出す。箪笥は赤みがかった木製の、よく磨かれているのだろう表面がつややかに光ったもので、具体的ではないが何らかの思い出があることは覚えている。いつの間にか起きだした女が壁にもたれかかりながらこちらを見ている。

 

古ぼけたテーマパークを歩いていくと、柵のない動物園のコーナーに行き当たる。やにわに人の気配に活気づいてきて、門を抜けるとライオンが左手に待ち構えていた。そのライオンの骨格が人間に近づいて、遠のいて、ぐよぐよと変形し歪んでいくのを悲しく思っていると、草はらの向こうにまた別な動物がいるのが見える。近づきたい、隔てるものは何もないのだ、そう進んでいくと足元がぬかるんできて、沼のような場所に出た。係員のアナウンスが響いて、乾いた地面まで戻るように指示される。肉食だろう動物達が沼の向こうからどんどん走って差し迫ってくるのから逃れようと、その場にいる人々は泥や草に足を取られつつ後退する。柵がないからといって人に従えさせているとか満腹にさせているとかいうわけではないらしい。ようよう足が沈まない程度の地面に行き当たると平和が戻ってきて、その土地を治めているらしい先住民が食べられずに済んだことを喜ぶ歌を歌って火を囲む。いつの間にか夜になっていた。結局ろくに動物見れなかったな、腑に落ちないながら隣にいた女と手を取って踊るが、喋るわけでもない、笑いもしない、ほとんど人形のような木や廃材で出来たつぎはぎだらけの体が相手だったので一人で踊っているようなものだ。

 

映画の中の女は肉感的で美しかった。異国のドラマは、オレンジがかったフィルターを通して撮影されていて、それが一層青色を引き立てていた。最初から最後まで観たが、ラストシーンは半分寝かけていたのと人から話しかけられていたので字幕をほとんど見逃してしまった。巻き戻しのボタンを押す。記憶まで遡るような感覚になる。頭の中をひっかきまわされているのだ。「出会ってしまったから恐ろしい、出会わなければ知らずにいられた」確かそんな台詞だったと思う。頭の中のストーリーと照合しながらもう一度ラストシーンを辿る。映画の中の女は井戸の前で絶命した。

エンドロールにはアラビアのロレンスとあったが全く違う映画です。200分越えの作品とあってまだ手を出していない。

 

用事のない休日に午前中に起きるのは久々だった。