山々から白く煙が立ち上っていた。夕方のぬるい風が吹き抜けて、湯気のように緑茂った斜面から最初はとろとろと、次第にもうもうと煙がくゆっていく。地面の熱と風の冷たさの差によるものらしい。珍しい現象だ。これは写真に収めたい、カメラは持っていないから、スマホでどうにかしたいけれどこの見た目そのままに写せるだろうか。はやる気持ちを抑えきれず斜面を駆け上り、スマホを取りに丘を登った先の家を目指す。柔らかな苔むした山肌はやはり白く濡れていて、ひと踏みごとに水気を靴に沁み込ませる。玄関にかけこんで人々になにやら話しかけられるのをおざなりに返し、手にスマホを持って再び玄関を出る。立ち上る湯気はもう霧のように全体を覆ってしまった。ああこんな景色があるのかと立ちつくす。

 

地図を埋めなければ。世界地図の、イタリアの東側は海溝深く、スコップで砂をかき集めて足してみても意味すらない。南側の砂を掘っていると灰色のキャビネットが出土する。中身は確かめず掘り進める。また、しっかりと根を張っていると思われたイタリアは、渡した橋のように南北の2点で自重を支えていて、南の砂を取ってしまえば幼いころ遊んだ砂場の棒倒しのようにいつか崩れ去ってしまうだろうことも判明した。足元にある二手に分かれた小さな双子のイタリアに途方に暮れていると、世界史の講釈が始まった。曰く、イタリアの東、海の向こうにはエジプトがあり、隣接するようにマレーシアがある。その大陸とイタリアの境に昔の王様は城壁を築き、敵の侵入を防いだ。他にも城壁はあちらこちらにある。未開の世界は恐怖そのもので、黒く輪郭だけが記載された見知らぬ地図上の国は時が経っても詳細が分からない。

足元がこんなにも不安定なのに、四方ばかり気にして、知らないとは恐ろしいことだ。

 

スカイプ会議に入れられている。クラスメイトと話すのはいつ振りだろうか。最初二人きりで話していた名前が同じ子と打ち解けるにつれ、もう一人通話先にいることに気づく。この二人は互いに仲が良かったので話題も尽きず、若干聞き役に回りながら、何をするわけでもなく口だけが分離したように動いている。少し離席して戻ってみれば、5人、いやもっと、人数は正確に分からないが増えている。久しぶりと、元気だったか確認して、相手先すら把握できないお喋りの場でますます口は閉ざされる。

 

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2時間ほど転寝をしていた。1時間未満の短い睡眠にするつもりだったので、椅子に凭れてそのまま寝入ってしまった。途中目覚ましをかけたが眠いものは眠い。体がすっかりかたくなってしまった。その間にこれらを見た。