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庭の猫を撫でようと、屈んで見やれば沈丁花の蕾が膨らんでいた。あれはいつもは咲いて匂いが漂ってからああこの季節が来たなと分かる。もう少しすれば花開いて遠くからでも香るようになるだろう。

 

後部座席での移動中、方々を眺めるのにも飽きてシートの隙間から運転者の耳の後ろのほくろを眺めていた。ほくろが耳の後ろにあるって面白い。その人は自分の耳の後ろがどうなっているか知っているだろうか。

自分で認識できない体の領域というものがある。背中の表情なんかがそれだ。認識できる範囲でも、はっと気づくまでなかったもののように扱っていることもある。首元にあるほくろは鏡を覗けば必ず目に入るはずなのに、数年前までその存在をないものとして過ごしていた。一度意識すれば目が行く。

そういえば以前掌にできたほくろのようなもの、まだ消えていない。